フューチャーソース・コンサルティング 最新市場 分析レポート

Vol. 211

Audio Collaborative 2020とリモートコンテンツ作成の爆発的な成長

2020年11月30日

イベント解説

世界中の家族と企業はともに、COVID-19から甚大な影響を受けましたが、特に注目に値するプラスの影響が一つあります。それはパンデミックを受けて、消費者が自らの創造性を表現するようになったことです。外出禁止令は、人々が立ち止まり、新しいことを学ぶ時間と機会につながりました。家庭での録画機能に関して言えば、専門知識なしで使えるさまざまな機器やツールを廉価で利用できるようになって、非常に魅力的なコンテンツを作成する機会が生まれました。

Audio Collaborative 2020で、市場アナリストのJames Kirby氏は、コンテンツ作成市場の詳細、仮想イベントの驚異的な成長やライブストリーミングについて、また新型コロナウイルスがきっかけとなってプロ仕様のオーディオ機器が多数、家庭用意で回るようになったことについて取り上げました。Kirby氏の議論には、Meridith Rojas氏(Logitech社全社のクリエイターマーケティング部門責任者)、Jim Odom氏(PreSonus社創業者、最高戦略責任者)、Katy Templeman-Holmes氏(Harman Professional社市場戦略担当ディレクター)も加わりました。

外出禁止令下で初心者のコンテンツ作成を後押ししたTikTok

TikTokと言えば、専門知識を持たない消費者がコンテンツを作成できる、極めて効果的なツールです。Meridith Rojas氏は「このようなプラットフォームは、消費者の自己表現欲を刺激し、自らを楽しく表現する手段となりました。その流れの中で私たちは、思いもよらない才能を見つけることとなりました。これこそ人々がソーシャルネットワークを介して集い、単なる閲覧者であることを超え、積極的な参加者となった瞬間です」

多くの場合、最初はスマートフォンの基本的な機能を使用しているものの、オンラインでフォロワーが付き始めると、専門知識がなかった消費者にも、飽くことなく見た目とサウンドを改善しようとするニーズが生まれます。Meridith氏はこの段階を指して、人々が視聴者に自分の視点を共有することに夢中になる、コンテンツ作成の第一段階であると述べ、これがプロ用オーディオ製品に対する消費者の関心の台頭につながったと付け加えました。

物理的な会場でのコンサートからビジュアルコンテンツ作成への移行

Jim Odom氏はコンサートのライブストリーミングと仮想体験はまったく別物であると述べました。Odem氏はさらに「この問題に対して業界では、より良質なライブストリーミングツールを開発することで新しい対処法を生み出そうと努力していますが、コンサートを仮想体験するファンが同じく仮想体験する別のファンたちにリアルタイムで、かつより良い方法で加わるには、どうすればよいでしょうか?私たちはこの仮想消費体験をはるかに良質なものにしなくてはなりません」とも述べました。またMeridith氏は「ライブストリーミングというソリューションに見込みがないと言っているわけではありませんが、事実として、現在提供されている既存コンテンツには、人間の要素が見当たりません」と言葉を付け足し、「さまざまなコンサートが『フォートナイト』で開かれるなど、従来のジャンルに収まらないクロスプラットフォームの興味深い現象が起きており、現在、ファンはどこか別の場所にいるつもりになって楽しんでいるわけではありません。社会的観点から物理的会場でのイベントに代わるものという意味では、まだ答えが見つかっていません」と続けました。

パンデミック後はハイブリッドコンサートが主流となる長期見通し

Meridith氏の説明によると、ハイブリッドモデルは、イベントのライブストリーミングを楽しむ消費者に、独自の視点を与えます。つまり配分モデルによって、コンサート会場でコンサートを楽しむファンよりも有利な体験ができるようになります。「たとえばカメラアングルの変化や舞台裏の『内幕』を見せることなども考えられます。どのような形でハイブリッドモデルを持ち、家庭内消費の体験と差別化していくべきでしょうか?ただステージ上のものを別の媒体で提供するという話ではないのです」

Katy Templeman-Holmes氏はこの見解を拡充し、ポイントはリモートで参加するファンにとって特別な体験を提供することだと補足しました。「オーディオ品質は依然として、プロ用機器でも、民生品や消費者体験でも重視されています。帯域幅や圧縮方法が改善されるにつれて、今はこのような差別化の機会が、かつてないほど大きくなっています」最終的に、民生オーディオ機器のオプションを拡充することが、ハイブリッドイベントの成功に影響を与えるでしょう。

オーディオ業界の動向を左右するテクノロジー

Templeman-Holmes氏は、現在台頭中で、最終的に時間的にも経済的にもより効果的なプロセスを生み出す、リモート消費分野について次のようにコメントしました。「これは実現された大きな推進要素です。状況によってもたらされた分野ですが、今や人々は、ただリモート演奏が可能なことを認識する段階を超え、リモート演奏を高く評価し、リモート演奏の利点を理解しています」

Templeman-Holmes氏は、AR、VR、没入型オーディオなどのテクノロジーが私たちの創造性とエンゲージメントの維持に役立つとしつつ、今後の課題はまだ高度なインフラストラクチャが実現し得ない発展途上国のテクノロジー障壁だと説明しました。最終的にはこの課題が、リモート消費の成長曲線に影響を及ぼすでしょう。Templeman-Holmes氏は「ここには莫大な機会があり、明るい未来が待っています。さらなる発展に向けて、業界を盛り上げる要素が増え、オープンな考え方が広まり、アジャイルなテクノロジーがそろっています」とコメントしました。

COVID-19から生まれた長期的コンテンツクリエイターたち

「私たちは皆、外出禁止令によって、従来より多くの創造性を発揮できる状況を強いられなければ、得られなかったものを発見したと思います」とMeridith氏は述べました。「さまざまな方法で考えてきましたが、私たちは確かにある種の効率性を会得しました」

さらにJim Odom氏は、外出禁止令の間に活用されたコラボレーションツールのおかげで、ミュージシャンたちは創造性を維持し、リアルタイムでファンとつながったと補足しました。「これは間違いなく、今後も爆発的な発展を続ける分野になるでしょう。パンデミック後の消費者は従来以上に物理的会場での体験を欲するだろうことは間違いありませんが、これらのテクノロジー要素を知らなかった頃に戻ることは決してできません」

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